
健康診断の結果を見て、「コレステロールが高い」「中性脂肪が多い」と書かれていると、不安になる方も多いのではないでしょうか。
高コレステロール血症(脂質異常症)は60歳以上の4人に1人程度が発症する、ありふれた病気です。
脂質異常症とは、血液中の脂質のバランスが崩れた状態です。代表的な検査項目には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)があります。
LDLコレステロールは、増え過ぎると血管の壁にたまりやすいため、一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれます。一方、HDLコレステロールは、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収する働きがあり、「善玉コレステロール」と呼ばれています。中性脂肪は、身体を動かすための大切なエネルギー源ですが、過剰になると動脈硬化や脂肪肝などと関係します。
脂質異常症の怖いところは、多くの場合、すぐには目立った自覚症状がないことです。「痛くない」「元気に生活できている」という理由だけでは、問題がないとは判断できません。健康診断や血液検査で異常を指摘されたら、数値をそのままにせず、かかりつけの先生と自分の状態を確認することが大切です。

<脂質異常症を放置するとどうなる?>
血液中に余分なLDLコレステロールなどが多い状態が続くと、脂質が血管の壁に入り込み、「プラーク」と呼ばれるかたまりを作ります。これによって血管が硬くなったり、血液の通り道が狭くなったりする状態が動脈硬化です。
動脈硬化はゆっくりと進行するため、初期の段階ではほとんど症状がありません。しかし、プラークが大きくなったり、突然破れたりすると、その部分に血栓ができて、血流が遮断されることがあります。
心臓の血管で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞につながります。また、足の血管に動脈硬化が進むと、歩いたときに足が痛む、足先が冷える、傷が治りにくいといった症状が現れることもあります。
脂質異常症は、すぐに症状を起こす病気というよりも、放置していると重大な病気の危険性を高める「静かなリスク」です。特に糖尿病、高血圧、喫煙、慢性腎臓病、肥満などが重なると、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性が高まります。そのため、コレステロールの数値だけではなく、持病や生活習慣なども含めて総合的に考える必要があります。

<脂質異常症の原因は?>
脂質異常症には、遺伝的な体質が大きく関わっているとされています。そのため、必ずしも「食生活が悪いから起こる」とは限りません。脂質異常症になりやすい体質に、食べ過ぎ、脂質や糖質の多い食事、運動不足、体重増加、過度の飲酒、喫煙などの生活習慣が重なることで、発症しやすくなります。
特に、内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」では、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低くなりやすい傾向があります。甘い飲み物やお菓子、アルコールの取り過ぎによっても、中性脂肪が上昇することがあります。
遺伝的な原因によって、若い頃からLDLコレステロールが高くなる「家族性高コレステロール血症」という病気もあります。若い頃からLDLコレステロールが高い方や、血縁者に若くして心筋梗塞を発症した方がいる場合には、特に注意が必要です。
さらに、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病、肝臓病などの病気や、服用している薬の影響によって脂質の値が変化することもあります。原因を正しく見極めるためには、食事や運動習慣だけでなく、持病、家族歴、服薬内容なども確認することが大切です。
受診の際は、健康診断や過去の検査結果、お薬手帳をご持参ください。数値の変化や原因を確認しやすくなります。また、中性脂肪は採血前の食事や前日の飲酒などによって変動することがあるため、必要に応じて再検査を行います。

< 脂質異常症の治療について>
脂質異常症の治療では、食事や運動、体重管理、禁煙など、生活習慣を整えることが基本となります。
食事では、肉の脂身や加工肉、バター、生クリームなどの取り過ぎを控え、魚や大豆製品、野菜、海藻、きのこ類などをバランスよく取り入れましょう。中性脂肪が高い場合は、甘い飲み物やお菓子、アルコール、夜遅い時間の食事を見直すことも大切です。
運動は、必ずしも激しいものである必要はありません。まずは歩く時間を増やす、階段を使う、長時間座り続けないようにするなど、日常生活の中で身体を動かす機会を増やしましょう。無理なく継続できる方法を選ぶことが重要です。
体重が多い方では、少しの減量でも、中性脂肪だけでなく血糖値や血圧の改善が期待できます。ただし、極端な食事制限を短期間だけ行うのではなく、長く続けられる生活習慣を身につけることが大切です。
生活習慣を改善しても数値が十分に下がらない場合や、すでに心筋梗塞・脳梗塞を経験している方、糖尿病などがあり将来の動脈硬化のリスクが高い方には、薬による治療を検討します。
薬が必要かどうか、また、どの程度まで数値を下げるべきかは、年齢や持病、家族歴、喫煙歴などによって異なります。「コレステロールの薬を飲み始めると、一生やめられないのでは」と心配される方もいますが、治療の必要性は患者さんごとに判断し、効果や副作用を確認しながら調整していきます。
健康診断で脂質異常症を指摘されても、必要以上に怖がることはありません。しかし、自覚症状がないからといって放置することは禁物です。現在の検査値と将来のリスクを確認し、ご自身に合った方法で改善を続けることが大切です。
検査結果について気になることがある方は、健康診断の結果をご持参のうえ、かかりつけ医にご相談ください。



