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こんにちは、院長の髙橋一久です。河内長野市・富田林市をはじめとする南河内地域の皆さまへ、火曜日は肥満症専門医として、肥満関連についてわかりやすく解説していきたいと思います。先日、大学でいわゆる「肥満遺伝子」のエピゲノムについて研究をしていることもあり、肥満遺伝子検査についてインタビューを受けました。なので、今日のコラムの内容は、「肥満遺伝子」がテーマです。
「遺伝的な体質の傾向を知り、自分にあったダイエットを始めませんか?」
「遺伝子検査して、自分に合ったダイエットをしませんか?」
最近、こういう売り文句の肥満遺伝子キットが売っています。ダイエットを研究、治療させていただいいることもあり、アンテナが高いだけかもしれませんが、ひと昔より増えました。
以前(といっても10年前以上前ですが・・・)は血液が主流だった気がしますが、最近は、唾液などを使って手軽に調べられる「ダイエット遺伝子検査」も増えてきました。
流行っている要因としては検査コストの低下があげられます。遺伝子解析技術は本当に日進月歩で、検査のコストがびっくりするぐらい下がっており、研究費がない、しがない研究者として大変助かっているのですが、それが一般市場にまで波及してきているのだと思います。
少し話がそれました。ダイエット遺伝子検査についてですが、結論からいうと、肥満遺伝子というものは確かにあって、体重の増えやすさに関係しています。ただ、遺伝子検査だけで「糖質で太る」「脂質を減らせば痩せる」などの体質を言い切ることはできないです。
ではつぎの項目から理由について説明していきましょう。
同じだけ食べても、太り方は人によって違いますが、双子では似た太り方をします。
遺伝の影響を示す有名な研究を1つ紹介します。
1990年、一卵性双生児12組に、普段の食事に加えて1日1,000 kcalを週6日、合計84日間摂取してもらう研究が行われました。
全員が同じ84,000 kcalを余分に摂取したにもかかわらず、体重増加は4.3〜13.3 kgと大きな差がありました。一方、一卵性双生児のペア同士では体重の増え方が似ていました(相関があるといいます)。これは、体重が増えやすいかどうかには遺伝的な要因が関係することを示しています。引用文献:ニューイングランド医学雑誌
ただし、ここで大切なのは、「遺伝が関係する」ことと「遺伝子検査で最適な食事法が決まる」ことは別だという点です。
市販のDNA検査が、SNSで意味がないとか批判的によく言われる理由。
先に結論を述べると、遺伝子があったとしてもそれが働いているのか休んでいるのか市販のDNA検査ではわかりません。
遺伝子は、DNAに入っている「私たちの体に必要な物質をつくる設計図」です。
しかし、DNAは設計図があるだけで、すべての遺伝子が常に働いているわけではないです。
どの遺伝子を、いつ、どの程度働かせるか。その調節に関わる仕組みのひとつが「エピゲノム」です。
かなり簡単にいうとエピゲノムは「設計図を動かすスイッチ」です。このスイッチが入っていないと、遺伝子は働かないと思ってください。
市販の遺伝子検査では、主にDNA配列の違いを調べます。DNAだけでなくエピゲノムを調べないとその遺伝子が働いているかわかりません。遺伝子があったとしてもそれが働いているのか休んでいるのか市販のDNA検査ではわかりません。だから「意味がない」と批判されることがあります。
本当に意味がないかどうかは、臨床研究が必要になってきます。質がいいものがたくさんあると、それはより確からしいと考えられるようになります。
この遺伝子検査についても研究されており、実際、609人を低脂質食または低炭水化物食に割り付けて1年間追跡した研究では、調べた遺伝子パターンによって「こちらの食事のほうが痩せる」と予測することはできませんでした。JAMA ネットワーク
そのため僕は、減量方法を決める目的だけで遺伝子検査をおすすめすることはしていません。
エピゲノムは「自由にON・OFFできるスイッチ」ではありません
つぎの疑問として肥満する遺伝子のエピゲノムを常にOFFにしたらいいじゃないか?というものがあります。
(というか、この疑問は僕自身が考えたことであり、ここが僕の研究分野なんです。)
エピゲノムは、環境の影響を受けて変化することがわかっています。
「かなり強い」環境変化を起こすと長期的なエピジェネティックの差がおきることがわかっています。
「かなり強い環境変化」を示す代表的なものとしてオランダ飢餓(Dutch Hunger Winter)の研究があります。オランダで飢餓があった時期に生まれた人を調べた調査研究で、胎児期にお母さんが飢餓に曝露された人では、約60年後にもっIGF2という遺伝子の<DNAメチル化>(説明が難しいですが、エピゲノムのスイッチの名前だと思ってください。)に差が認められました。
ただ「かなり強い環境変化」というのが難点でどの程度の環境変化が影響するかがまだわかっていません。
食事や減量介入でもDNAメチル化の変化は報告されていますが、変化は小さかったり研究間で再現性が十分でなかったりし、「この生活習慣をすれば、この治療をすれば、この遺伝子をON/OFFできる」まで確立されているわけではありません。
エピゲノムをどう変えれば、健康や肥満にどう影響するのか。日本も含めて現在も研究が続いています。
それでも、検査をする意味がないわけではありません
エピゲノムの面白さについてはまたの機会で書かさせていただき、ダイエット遺伝子検査の話にもどります。
ダイエット遺伝子検査では、最適な減量方法をみつけることはできないと思います。
一方で、「検査を受けたことをきっかけに食生活を見直してみようと思った」「自分の体について興味を持つようになった」というのであれば、それは一つの良い使い方だと思います。
ダイエットで大切なのは、まず始めること、そして無理なく続けることです。
遺伝子検査の結果は「あなたのダイエットの答え」ではなく、自分の体や生活習慣を考えるための一つの情報として受け取るくらいがちょうどいいと思います。
体重がなかなか減らない場合も、「意志が弱いから」と考える必要はありません。肥満症は、体質だけでなく食欲を調節する仕組みや生活環境など、さまざまな要因が関係する病気です。
河内長野市の髙橋内科糖尿病内科 松尾皮膚科では、肥満症専門医・糖尿病専門医として、体重だけを見るのではなく、血糖値、血圧、脂質、生活スタイルなどを確認しながら、その方に合った減量方法を一緒に考えています。富田林市や南大阪周辺で、体重増加や健康診断の異常が気になる方もご相談ください。
遺伝子は体重に影響します。しかし、遺伝子だけで私たちの体重が決まるわけではありません。
検査結果に振り回されず、続けられる方法を探すこと。それが減量では何より大切です。
当院の生活習慣病、肥満外来の説明ページ https://dmskin-cl.com/menu/medical02/
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髙橋 一久
資格:日本肥満学会認定 肥満症専門医/日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医/日本専門医機構h認定 内分泌代謝・糖尿病内科領域指導医/日本内分泌学会 内分泌代謝専門医、指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医/日本内科学会 内科認定医、指導医
関西医科大学医学部を卒業後、国立国際医療研究センター病院などでの研修を経て、関西医科大学附属病院に勤務。肥満症、糖尿病、甲状腺疾患の診療に携わるとともに、木村 穣先生の指導のもと、減量治療に関する研究に従事した。
2026年に「髙橋内科糖尿病内科 松尾皮膚科」を開院。糖尿病専門医・肥満症専門医として医学的根拠を大切にしながら、患者さん一人ひとりの生活や希望に寄り添い、無理なく続けられる減量治療や生活習慣の改善をともに考える診療を心がけている。








